蜂窩織炎の恐ろしさとは?蜂窩織炎の症状や原因・予防法を解説
手や足にできた皮膚の赤みや腫れ、痛みは、単なる炎症ではないかもしれません。一見すると軽症に思えるその症状が、実は「蜂窩織炎」という、進行が非常に速く、命に関わることもある恐ろしい感染症のサインである可能性があります。
そこでこのコラムでは、以下の内容を中心に解説していきます。
- 蜂窩織炎の恐ろしさとは?
- 蜂窩織炎の主な6つの症状
- 蜂窩織炎を引き起こす5つの原因
- 蜂窩織炎の診断方法や治療
記事の最後には、蜂窩織炎を予防する方法も解説しています。皮膚のわずかな変化を見逃さないことが、あなたの健康を守る第一歩です。自分や大切な人を守るために、蜂窩織炎の症状や原因、そして予防法についてひとつずつ理解していきましょう。
1.蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは?
蜂窩織炎は、細菌感染によって引き起こされる皮膚の感染症です。主な原因菌は黄色ブドウ球菌や連鎖球菌ですが、その他の細菌によって発症することもあります。
特徴的なのは、感染が皮膚の深い層である皮下組織まで及ぶことです。通常は、創傷や虫刺され、手術部位、あるいは他の皮膚感染症などから細菌が侵入して発症します。感染が進むと、患部は腫れ、赤くなり、熱感や痛みを伴います。
特に注意すべきは、蜂窩織炎は非常に速く広がる傾向がある点です。感染した部分から周囲の組織へ急速に進行するため、治療が遅れると重篤な合併症につながるリスクが高まります。
治療には主に抗生物質が用いられますが、症状が重い場合や抗生物質が十分に効かない場合には、外科的処置が必要になることもあります。そのため、早期に医師の診断を受け、適切な治療を開始することが非常に重要です。
また、蜂窩織炎は高齢者や免疫力が低下している方、糖尿病の方、慢性疾患を抱える方で特にリスクが高くなります。これらの方は日常から注意を払い、異常を感じたら早めに医療機関を受診することが推奨されます。
2.蜂窩織炎の恐ろしさとは?
蜂窩織炎は、通常、早期に適切な治療が行われれば、ほとんどの場合は問題ありません。しかし少しでも放置することで、以下のような危険性が伴う病気です。
- 感染の広がりが驚くほど速い
- 「敗血症」を引き起こす危険性がある
- 最悪の場合、「壊死性筋膜炎(人食いバクテリア)」に至ることも
- 膿瘍(のうよう)のリスクもある
- 後遺症のリスクがあり再発もしやすい
「たかが皮膚の感染症」と軽視していると、取り返しのつかない事態を招きかねません。なぜこの病気が怖いのか、それぞれ解説します。
2-1.感染の広がりが驚くほど速い
蜂窩織炎の恐ろしい点の一つは、赤みや腫れといった症状が、数時間から1日という非常に短い時間で急激に広がっていくことです。
皮膚の深い部分で細菌が猛スピードで増殖するため、朝には足首だけだった赤みが、夕方には膝まで広がっているということも珍しくありません。
この進行の速さが、「少し様子を見よう」という自己判断を、極めて危険なものにしています。
2-2.「敗血症」を引き起こす危険性がある
蜂窩織炎の最も恐ろしい合併症が、細菌が血液中に侵入し、全身に回ってしまう「敗血症(はいけつしょう)」です。
敗血症になると、高熱や悪寒、意識の混濁などが現れ、血圧が急激に低下する「敗血症性ショック」に陥り、多臓器不全で命を落とすことも少なくありません。皮膚の感染が、全身の命に関わる事態へと急変するリスクをはらんでいるのです。
糖尿病や免疫力が低下している方は特に注意が必要です。
2-3.最悪の場合、「壊死性筋膜炎(人食いバクテリア)」に至ることも
非常にまれですが、感染がさらに深い、筋肉を覆う「筋膜」にまで達すると、組織が急激に壊死していく「壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)」に移行することがあります。これは「人食いバクテリア」とも呼ばれ、一刻も早く壊死した組織を外科手術で広範囲に切除しなければ、救命が極めて困難になります。
蜂窩織炎と初期症状が似ているため、急速な悪化が見られる場合はとくに注意が必要です。
2-4.膿瘍(のうよう)のリスクもある
蜂窩織炎の炎症が皮膚の深い部分に集中すると、細菌の死骸や白血球などが溜まって、膿(うみ)の袋を形成する「膿瘍(のうよう)」になることがあります。
膿瘍ができてしまうと、抗生物質の点滴だけでは治らず、皮膚を切開して中の膿を物理的に排出する「切開排膿(せっかいはいのう)」という処置が必要になる場合も。治療がより大掛かりになり、体に傷跡が残る可能性もあります。
2-5.後遺症のリスクがあり再発もしやすい
蜂窩織炎は、一度治っても、後遺症が残ったり、同じ場所で何度も再発を繰り返したりしやすい、という特徴があります。
強い炎症によって、皮膚の下にあるリンパ管がダメージを受けると、手足のむくみが慢性的に続いてしまう「リンパ浮腫」という後遺症が残ることがあります。
また、糖尿病や水虫といった、もともとのリスク因子がある方は、再発を繰り返しやすいため、日頃からの予防ケアが非常に重要です。
3.蜂窩織炎の主な6つの症状
蜂窩織炎の主な症状は、以下の6つです。
- 皮膚の腫れ
- 赤み
- 痛み
- 熱感
- 発熱
- 膿の排出
一つずつ解説します。
3-1.皮膚の腫れ
患部が、炎症によって水分を多く含みパンパンに腫れあがるのは、蜂窩織炎の典型的な症状です。皮膚の深い部分で炎症が起きるため、指で押すと、その跡がしばらく残るようなむくみを伴う腫れ方をすることがあります。
靴下のゴムの跡がくっきりと残るようになったら、注意が必要です。
3-2.赤み
患部が、境界線がはっきりしない形で広範囲にわたって赤くなるのも、蜂窩織炎の非常に特徴的な症状です。皮膚の深い部分で炎症が起き、その部分の毛細血管が拡張して、血流が増加するために起こります。
押すと少し色が薄くなり、離すとまた赤く戻るのが特徴です。赤みが急速に広がっていく場合は、とくに注意する必要があります。
3-3.痛み
蜂窩織炎では、ズキズキとした、あるいはジンジンとするような、持続的な痛みを伴います。皮膚の深い部分で起きている炎症が、神経を刺激するためです。
触ったり、動かしたりすると、痛みがさらに強くなるのが特徴です。見た目の赤みや腫れ以上に、この強い痛みが日常生活に大きな支障をきたします。
3-4.熱感
患部に触れると、明らかに周囲の皮膚よりも熱を持っていることも、細菌感染による強い炎症が起きているサインです。これは、細菌と戦うために、患部に大量の血液が集まってきているために生じます。
赤みや腫れ、痛みと合わせて、この熱っぽさを感じるかどうかが、診断の重要な手がかりとなります。
3-5.発熱
感染が皮膚だけでなく、全身に影響を及ぼし始めると、38度を超えるような高熱や悪寒、倦怠感といった全身症状が現れます。これは、体全体の免疫システムが、侵入した細菌と戦っている証拠です。
皮膚の症状に加えて、全身の発熱が見られる場合は、感染が広がりつつあるサインです。速やかな治療が必要となります。
3-6.膿の排出
炎症が進行し、皮膚の深い部分に膿が溜まると、皮膚の一部が破れて、黄色や緑色のドロっとした膿が排出されることがあります。膿瘍が形成されると、抗生物質の効果が届きにくくなるため、皮膚を切開して膿を出す処置が必要です。
水ぶくれ(水疱)ができることもあります。
4.蜂窩織炎を引き起こす5つの原因
蜂窩織炎は、健康な皮膚に突然発症する病気ではありません。必ず、皮膚のバリア機能が壊れた「傷口」から、原因となる細菌が体内に侵入することで引き起こされます。日常生活に潜むささいな皮膚のトラブルが、その入り口となるのです。
ここでは、その代表的な以下5つの原因について解説します。
- 皮膚の創傷
- 虫刺され
- 手術部位
- 他の皮膚感染症
- 免疫機能の低下
詳しく見ていきましょう。
4-1.皮膚の創傷
切り傷や擦り傷、靴擦れ、あるいは乾燥による皮膚のひび割れといったごくありふれた小さな傷が、蜂窩織炎の最も一般的な原因です。
どんなに小さな傷であっても、皮膚のバリア機能が破られた場所であることに変わりはありません。そこから皮膚の表面にもともと存在する常在菌などが侵入し、感染を引き起こすのです。
4-2.虫刺され
蚊やブヨ、ダニなどに刺された場所を強く掻き壊してしまうことも、蜂窩織炎の引き金となります。
虫に刺された箇所はもともと炎症が起きていますが、掻き壊すことで、皮膚の表面に無数の小さな傷ができてしまいます。その傷から、指についている細菌などが侵入し、二次的な細菌感染として蜂窩織炎を発症するのです。
4-3.手術部位
外科手術で皮膚を切開した傷口から細菌が侵入し、蜂窩織炎を起こすことがあります。
手術の傷は、縫合されていても、完全に閉じるまでには時間がかかります。その間に傷口の管理が不十分であったり、体の抵抗力が落ちていたりすると、細菌感染のリスクが高まるのです。
手術後に傷口の周りが赤く腫れてきた場合は、すぐに主治医へ相談しましょう。
4-4.他の皮膚感染症
足の水虫(白癬)を放置していることで、足に蜂窩織炎を発症する可能性があります。
水虫になると、指の間などの皮膚がふやけて、ただれたり、ひび割れたりします。この目に見えないほどの小さな亀裂が、蜂窩織炎の原因菌である、黄色ブドウ球菌やレンサ球菌の絶好の侵入口となってしまうのです。
足の蜂窩織炎を繰り返す方は、まず水虫の完治を目指すべきです。
4-5.免疫機能の低下
糖尿病やがん、あるいはステロイド治療などによって体全体の免疫機能が低下している状態も、蜂窩織炎の大きな原因です。
免疫機能が低下していると、健康な人であれば問題にならないようなわずかな細菌の侵入に対しても、体が十分に抵抗できず、重症化しやすくなります。
また、足のむくみ(リンパ浮腫)がある方も、皮膚の抵抗力が弱まっているため、蜂窩織炎を繰り返しやすいことが知られています。
5.蜂窩織炎の診断方法
蜂窩織炎の診断は、主に以下の順を追っておこなわれます。
- 症状と身体所見の評価
- 病歴の問診
- 検査
- ほかの疾患との鑑別
詳しく解説しまs樹。
5-1.症状と身体所見の評価
医師はまず、患部の皮膚の状態を詳しく観察し、触れて確認します。蜂窩織炎に特徴的な、境界がはっきりしない広範囲の「赤み」や、指で押すと跡が残るような「腫れ」、そして、明らかに熱を持っている「熱感」や、圧迫による「痛み」の有無と程度を確認する工程です。
炎症のサインがあるかどうかが、診断の最も重要な根拠となります。
5-2.病歴の問診
次に、いつから症状が始まったか、そして、原因となりうるきっかけがなかったか、詳しくお話を聞きます。
たとえば、「数日前に足を擦りむいた」「虫に刺された場所を掻き壊してしまった」「水虫がある」といった、皮膚の傷に関する情報です。また、糖尿病など感染症にかかりやすくなる持病の有無も、診断の重要な手がかりとなります。
5-3.検査
蜂窩織炎の診断を補助し炎症の程度を客観的に評価するために、血液検査や、場合によっては画像検査をおこないます。
血液検査では、白血球数やCRPといった炎症反応の数値を確認し、全身への影響を測ります。また、原因となっている細菌を特定するために、血液や傷口の浸出液を培養する検査をおこなうこともあります。
5-4.ほかの疾患との鑑別
蜂窩織炎は、同じように皮膚が赤く腫れるほかの病気と見分ける必要があります。
たとえば、境界がより明瞭な「丹毒(たんどく)」や、アレルギー性の「接触皮膚炎(かぶれ)」、血栓が原因で足が腫れる「深部静脈血栓症」などです。
これらの病気と正しく見分けることが、適切な治療を選択するうえで非常に重要です。
6.蜂窩織炎の治療法
蜂窩織炎は早期に適切な治療を開始することが、重症化を防ぎ、後遺症のリスクを減らすうえで何よりも重要です。ここでは、主な5つの治療法について解説します。
- 抗生物質の使用
- 炎症の抑制
- 創傷ケア
- 安静
- ドレナージ
それぞれ解説します。
6-1.抗生物質の使用
蜂窩織炎治療の根幹は、原因となっている細菌(主に黄色ブドウ球菌やレンサ球菌)に有効な、抗生物質の投与です。
軽症の場合は飲み薬(内服薬)での治療が可能ですが、症状が重い場合や、急速に悪化している場合は、入院してより強力な抗生物質を点滴で投与する必要があります。医師の指示通り、決められた期間薬をきちんと飲み切ることが、再発を防ぐためにも重要です。
6-2.炎症の抑制
赤みや腫れ、痛みなどのつらい症状を和らげるために、炎症を抑える対症療法もおこないます。
たとえば、痛みに対しては、非ステロイド性抗炎症薬などの鎮痛剤を処方します。また、患部が非常に熱を持っている急性期には、患部を冷やすことで炎症と痛みを和らげる処置をおこなうこともあります。
6-3.創傷ケア
蜂窩織炎の原因となった皮膚の傷口がある場合は、その傷を清潔に保つための、適切な創傷ケアが重要です。傷口を洗浄・消毒し、細菌のさらなる侵入を防ぎます。
また、水虫が原因となっている場合は、抗真菌薬の外用薬を塗布するなど、原因となっている皮膚感染症を治療するために、抗生物質による治療と並行しておこないます。
6-4.安静
蜂窩織炎の治療中は、患部を安静に保つことが、回復を早めるために非常に大切です。とくに、足に発症した場合は、患部を心臓より高く上げて休むよう指導されます。これにより、患部に溜まった余分な水分(むくみ)が軽減され、腫れや痛みが和らぎます。
症状が改善するまでは、できるだけ歩き回るのを避け、安静を心がけることが求められます。
6-5.ドレナージ
もし、皮膚の深い部分に膿が溜まって「膿瘍」を形成してしまった場合は、抗生物質だけでは治癒が困難になります。この場合は、局所麻酔をしたうえで皮膚を小さく切開し、中に溜まった膿を物理的に排出させる「ドレナージ(排膿)」という外科的な処置が必要となります。
これにより、細菌の温床となっている膿を取り除き、抗生物質の効果を高め、治癒を促進します。
7.蜂窩織炎を予防する方法
蜂窩織炎を予防する基本は、細菌の「侵入口」をなくし、体の「抵抗力」を高めることです。ここでは、そのために今日から実践できる4つの重要な方法をご紹介します。
- スキンケアを徹底し、皮膚のバリア機能を高める
- 小さな傷や「水虫」を、絶対に放置しない
- 「むくみ(浮腫)」を管理・改善する
- 糖尿病などの基礎疾患をきちんと治療する
詳しく解説します。
7-1.スキンケアを徹底し、皮膚のバリア機能を高める
蜂窩織炎の予防で最も大切なことは、皮膚を常に清潔に保ち、保湿を欠かさないことです。
皮膚が乾燥してひび割れると、そこが細菌の侵入口となります。とくに、蜂窩織炎を起こしやすい足やすねには、毎日保湿クリームを丁寧に塗り、皮膚のバリア機能を高めましょう。
また、入浴後は保湿クリームなどを丁寧に塗り、皮膚の潤いを保ちましょう。また、足を清潔に保ち、爪を短く切っておくことも、不要な傷を防ぐうえで大切です。
7-2.小さな傷や「水虫」を、絶対に放置しない
蜂窩織炎の原因菌は、切り傷や虫刺され、そしてとくに水虫といったごく小さな皮膚の傷から体内に侵入します。とくに、水虫によって、皮がむけたりひび割れたりしている足の指の間は、細菌にとっての格好の侵入口です。
かゆみがなくても、皮膚科で水虫をきちんと完治させることが、足の蜂窩織炎を繰り返さないための最も重要な鍵となります。
7-3.「むくみ(浮腫)」を管理・改善する
足のむくみが慢性化していると、皮膚の抵抗力が低下し、蜂窩織炎を繰り返しやすくなります。そのため、むくみを管理・改善することが、蜂窩織炎の予防に繋がります。
むくみのある皮膚は、血行が悪く、栄養や免疫細胞が行き渡りにくくなっています。そのため、わずかな細菌の侵入でも感染が広がりやすくなるのです。
医師の指導のもとで弾性ストッキングを着用したり、意識的に足を高くして休んだりして、むくみを軽減させましょう。
7-4.糖尿病などの基礎疾患をきちんと治療する
糖尿病や、足の血管の病気(閉塞性動脈硬化症など)といった基礎疾患をお持ちの方は、その病気をきちんと治療し、良好な状態にコントロールしましょう。
とくに、糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、体の免疫力が低下し、細菌と戦う力が弱まります。また、血行不良も起こりやすくなるため、感染のリスクが非常に高くなります。
かかりつけ医と連携し、基礎疾患をしっかりと管理することが、結果として蜂窩織炎の再発を防ぎます。
8.まとめ
蜂窩織炎は、初期症状が軽いため見過ごされがちです。ですが進行すると、敗血症や壊死性筋膜炎といった深刻な状態に陥る危険性を秘めています。
しかし、過度に恐れる必要はありません。大切なのは、日々のスキンケアを徹底し、小さな傷や虫刺されを放置しないこと。そして何よりも、皮膚の赤みや腫れ、痛みが続くようであれば、すぐに医療機関を受診することです。早
期発見と適切な治療によって、蜂窩織炎は十分にコントロールできる病気です。このコラムで解説した内容をご参考に、蜂窩織炎の正しい対処法を身につけるようにしてください。
浅草橋西口クリニックMoでは、蜂窩織炎をはじめとしたさまざまな皮膚疾患に対しての診療をおこなっています。皮膚に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
