糖尿病と食事の基本とは?食事療法の原則や注意すべきポイントを解説
「糖尿病と食事の基本とは?」「糖尿病に適した具体的な食事方法を知りたい」「外食やコンビニで選べる食事の工夫を知りたい」と思っていませんか?
糖尿病治療において食事療法が不可欠なのは、高血糖による血管へのダメージを防ぎ、深刻な合併症を予防するためです。
そこでこの記事では、糖尿病と食事の基本や食事療法の原則、注意すべきポイントまで紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
1.糖尿病と食事の基本|なぜ食事コントロールが重要なのか?
糖尿病と食事の基本は、以下のとおりです。
- 食事が血糖値を上げる基本的な仕組み
- 高血糖の状態が血管を傷つけ合併症を引き起こす
- 食事療法は合併症を予防するための最も重要な治療
それぞれ解説します。
1-1.食事が血糖値を上げる基本的な仕組み
食事で摂った糖質は、体内でブドウ糖に分解され、血液に取り込まれます。このブドウ糖が血糖値を上げる原因です。ごはんやパンなどの主食に含まれる糖質は、消化されるとエネルギー源となるブドウ糖に変わります。
食事後、小腸から吸収されたブドウ糖は血液に乗って全身に運ばれるため、食後に血糖値が一時的に高くなります。血糖値の変動は、食事の内容、とくに糖質の量に大きく影響することを理解することが大切です。
1-2.高血糖の状態が血管を傷つけ合併症を引き起こす
高血糖が続くと、体内で活性酸素が増えたり異常なたんぱく質が作られたりして血管が傷つきます。これにより、網膜症、腎症、神経障害といった合併症のリスクが高まります。
血糖が過剰になると、血管の内壁にダメージを与え、血管が柔軟さを失い、もろくなってしまいます。とくに、目や腎臓、神経などに分布する細い血管はダメージを受けやすく、血流が悪くなることで機能が低下し、深刻な合併症が起こる可能性があります。
毎日の血糖値を適切に管理することが、こうした合併症を防ぐために重要です。
1-3.食事療法は合併症を予防するための最も重要な治療
食事療法は、血糖値を安定させ、合併症の発症や進行を防ぐための基本的で重要な治療法です。運動療法や薬物療法も大切ですが、血糖値に直接的に影響を与えるのは食事です。
薬で血糖値を下げても、食事管理ができていなければ血糖値は安定せず、血管への負担が軽減されません。薬物療法や運動療法の効果を最大限に引き出すためにも、食事療法をしっかり実践することが治療の基本となります。
2.糖尿病の食事療法における「3つの基本原則」
糖尿病の食事療法における基本原則は、以下の3つです。
- 自分に合った適正なエネルギー量を知る
- 主食・主菜・副菜をそろえ栄養バランスを整える
- 1日3食を規則正しく食べて血糖値の乱高下を防ぐ
ひとつずつ解説します。
2-1.自分に合った適正なエネルギー量を知る
1日に必要なエネルギー量は、年齢、性別、活動量によって異なります。まずは医師や管理栄養士に相談して、目標摂取カロリーを確認することが大切です。自分に合っていないエネルギー量を摂取すると、肥満や栄養不足を引き起こし、血糖コントロールが難しくなるためです。
デスクワーク中心の人と体を使う仕事の人では、1日の消費エネルギー量が異なるように、エネルギー必要量は一人ひとり違います。
専門家のアドバイスを受けて、自分に合ったエネルギー量を知ることが、食事療法を始める第一歩です。
2-2.主食・主菜・副菜をそろえ栄養バランスを整える
「主食・主菜・副菜」が揃った食事を意識することで、血糖コントロールに必要な栄養素を過不足なく摂取できます。特定の栄養素に偏った食事は、血糖値の急上昇や栄養不足の原因となるため注意が必要です。
ごはん(主食)、魚や肉(主菜)、野菜やきのこ(副菜)を組み合わせた定食スタイルの食事は、理想的な栄養バランスを簡単に実現できます。毎回の食事で彩りを意識するだけで、自然に栄養バランスが整いやすくなります。
2-3.1日3食を規則正しく食べて血糖値の乱高下を防ぐ
1日3食を決まった時間に食べることが、血糖値の安定につながります。長時間の空腹後に食事を取ると、体が栄養を溜め込もうとして血糖値が急激に上昇しやすくなるためです。
とくに朝食を抜くと、昼食後の血糖値が通常より大きく上昇する「血糖値スパイク」が起こりやすくなることが分かっています。
毎日できるだけ同じ時間に3回の食事を摂ることが、血糖値の急激な変動を防ぐためには重要です。
3.血糖値を上げにくい食べ物・控えたい食べ物
血糖値を上げにくい食べ物・控えたい食べ物を、以下4つ紹介します。
- 食品選びの目安となる「GI値」とは?
- 積極的に食事へ取り入れたい血糖値が上がりにくい食べ物
- 量や頻度に気をつけたい血糖値が上がりやすい食べ物
- 飲み物に含まれる糖質にも注意を払う
それぞれ解説します。
関連記事:糖尿病の方が食べてはいけないものはある?食事の注意点も徹底解説
3-1.食品選びの目安となる「GI値」とは?
「GI値」とは、食後の血糖値の上昇具合を示す指標で、この数値が低い食品ほど血糖値の上昇が穏やかです。GIは「グリセミック・インデックス」の略で、ブドウ糖を摂取した際の血糖値上昇を100とし、それを基準に各食品の血糖値上昇を相対的に数値化したものです。
GI値についての参考:GIについて学ぼう|大塚製薬
一般的に、GI値が70以上の食品は高GI食品、55以下の食品は低GI食品と分類されています。日々の食品選びでこのGI値を意識することで、血糖値の急激な上昇を抑えた献立作りがしやすくなります。
3-2.積極的に食事へ取り入れたい血糖値が上がりにくい食べ物
野菜やきのこ、海藻類などの食物繊維が豊富な食品や、玄米、全粒粉パンなどの低GI食品は、血糖値の急上昇を抑えるために積極的に取り入れたい食品です。これらの食品に含まれる食物繊維は、糖の吸収を遅らせる働きがあり、食後の血糖値上昇を穏やかにしてくれます。
具体的には、ほうれん草、ブロッコリー、しめじ、わかめなどがその例です。日々の食事にこうした低GI食品を一品加える工夫をすることで、血糖コントロールの改善に役立ちます。
3-3.量や頻度に気をつけたい血糖値が上がりやすい食べ物
白米や食パン、菓子類、果物など、糖質が多くGI値が高い食品は、食べる量や頻度を管理することが大切です。これらの食品は消化吸収が速く、食後の血糖値を急激に上昇させる原因になります。
完全に避ける必要はありませんが、量を普段の半分にしたり、食物繊維が豊富な食品と一緒に食べる工夫が重要です。血糖値を上げやすい食品と上手に付き合うことが、食事療法を継続するためのポイントとなります。
3-4.飲み物に含まれる糖質にも注意を払う
清涼飲料水や果汁ジュースなどは、吸収されやすい糖質を多く含んでおり、血糖値を急激に上昇させるため注意が必要です。液体に含まれる糖質は固形物よりも速く吸収され、血糖値にすぐに影響を与える特徴があります。
一見健康的に思える野菜ジュースやスポーツドリンクにも、予想以上の糖質が含まれていることがあります。水分補給の基本は水やお茶を選び、甘い飲み物は嗜好品として楽しむ意識を持つことが大切です。
4.糖尿病で血糖値をコントロールする5つの食べ方
糖尿病で血糖値をコントロールする食べ方は、以下の5つです。
- 食べる順番を「野菜→たんぱく質→炭水化物」にする
- よく噛んでゆっくり食べて食べ過ぎを防ぐ
- 食事を抜かず1日3食を規則正しく食べる
- 「腹八分目」を意識して過食する癖をなくす
- 夜遅い時間に食事を摂らない
ひとつずつ解説します。
4-1.食べる順番を「野菜→たんぱく質→炭水化物」にする
「ベジファースト」と呼ばれるこの食べ方は、食物繊維が糖の吸収を遅らせるため、血糖値の急上昇帽子に効果的です。食事の最初に野菜やきのこ、海藻類など食物繊維が豊富な食品を食べることで、あとから摂取する糖質の吸収を穏やかにする効果が期待できます。
具体的には、まずサラダや和え物、汁物から食べ、次に肉や魚などのたんぱく質を摂取し、最後にごはんなどの主食を食べる流れです。このシンプルなルールを守るだけで、食後の血糖変動を穏やかにすることができます。
4-2.よく噛んでゆっくり食べて食べ過ぎを防ぐ
よく噛んでゆっくり食べることは、食べ過ぎを防ぎ、結果的に摂取エネルギーを抑えることにつながります。
脳が満腹感を感じるまでには、食事開始から約20分かかると言われているため、食事を急いで食べると満腹感を感じる前に食べ過ぎてしまいます。そのため早食いは必要以上の量を食べてしまいやすく、過食や肥満の原因となります。
一口ごとに30回噛むことを目標にするなど、意識的に食事のペースを落とすことが重要です。
4-3.食事を抜かず1日3食を規則正しく食べる
食事の間隔が空きすぎると、体は次の食事で栄養を溜め込もうとし、その結果血糖値が上がりやすくなります。
朝食を抜いたり、忙しくて昼食を摂れなかったりすると、次の食事で「ドカ食い」をしてしまい、血糖値が急上昇しやすくなります。食事のリズムが乱れると、体内時計にも影響を与え、血糖値を調整するホルモンの働きが乱れる場合もあります。
健康的な血糖管理のためには、1日3食を規則正しく摂ることを心がけましょう。
4-4.「腹八分目」を意識して過食する癖をなくす
「もう少し食べたい」と感じる程度で食事を終えることが、適正なエネルギー量を守るポイントです。
満腹まで食べる習慣は過食につながりやすいため、外食時には出された量をすべて食べるのではなく、自分の適量を意識することが大切です。物足りないと感じた場合は、よく噛んで満足感を高めたり、温かいお茶を飲んで一息ついたりすることも効果的です。
日常的に「腹八分目」を心がけることで、無理なく摂取カロリーをコントロールでき、健康的な食生活が維持できます。
4-5.夜遅い時間に食事を摂らない
夜間はエネルギー消費が少ないため、就寝の3時間前には食事を済ませることが望ましいです。夜遅くに食事を摂ると、血糖値が高いまま就寝することになり、翌朝の血糖値にも悪影響を与える場合があるためです。
また、活動量が少ない夜に日中と同じ量の食事を摂ると、脂肪として蓄積されやすくなります。
もし仕事などで夕食が遅くなる場合は、夕方におにぎりなどを食べ、帰宅後は消化の良いおかずだけを摂る「分食」の方法も有効です。
5.【シーン別】外食・コンビニ・自炊の食事メニューと選び方
シーン別の外食・コンビニ・自炊の食事メニューと選び方は、以下の3つです。
- 外食では「定食スタイル」を選んで単品メニューを避ける
- コンビニでは「単品買い」をせずに「組み合わせ」を意識する
- 自炊では調理法と味付けを工夫して糖質・脂質を抑える
それぞれ解説します。
5-1.外食では「定食スタイル」を選んで単品メニューを避ける
外食では、主食・主菜・副菜が揃った定食を選ぶことが、栄養バランスを整える基本です。丼ものや麺類などの単品メニューは炭水化物が中心で栄養が偏りがちで、血糖値の急上昇を招きやすくなります。
焼き魚定食や生姜焼き定食のように、ご飯、汁物、主菜、副菜がセットになったメニューを選ぶと、自然と栄養バランスが整います。外食時には、まず定食メニューから選ぶ習慣をつけましょう。
5-2.コンビニでは「単品買い」をせずに「組み合わせ」を意識する
コンビニでも、商品を上手に組み合わせることで栄養バランスの取れた食事が実現できます。おにぎりやパンなどの単品だけでなく、サラダやゆで卵、惣菜などをうまく組み合わせることが重要です。
たとえば、おにぎりにパックのサラダ、焼き鳥、ヨーグルトなどを加えると、主要な栄養素をバランス良く摂取できます。コンビニを利用する際には、買い物かごの中身を一つの「定食」として選ぶよう心がけましょう。
5-3.自炊では調理法と味付けを工夫して糖質・脂質を抑える
自炊では、調理法や味付けを工夫して糖質や脂質を抑えられます。自炊は、食材から調理法、味付けまで自分で調整が可能です。
油を多く使う揚げ物や炒め物よりも、蒸し料理やグリル焼きを選ぶことで余分な脂質をカットできます。
また、砂糖やみりんを控えめにし、だしや香辛料の風味を活かすことで、満足感のある薄味に仕上げられます。
6.間食・飲み物・アルコールで注意すべきポイント
間食・飲み物・アルコールで注意すべきポイントは、以下の3つです。
- 間食は「何を・いつ・どれだけ」のルールを決める
- 飲み物は「無糖」を基本として隠れた糖質に注意する
- アルコールは適量を守って低血糖のリスクを知る
ひとつずつ解説します。
6-1.間食は「何を・いつ・どれだけ」のルールを決める
間食を完全に断つのではなく、糖質が少ないものを選び、食べる時間と量を決めて楽しむことが継続のコツです。血糖値を大きく変動させないためには、ナッツ類やチーズ、無糖ヨーグルトなど、血糖値を上げにくい食品を選び、1日の摂取カロリー内で決められた時間に食べることが推奨されます。
食べ過ぎを防ぐために、あらかじめ小袋に分けておくなど、工夫しておくことも効果的です。
関連記事:糖尿病でもお菓子は食べていい?間食時の注意点7選も解説
6-2.飲み物は「無糖」を基本として隠れた糖質に注意する
飲み物は水やお茶などの無糖のものを選び、スポーツドリンクや野菜ジュースにも糖質が含まれていることを意識することが大切です。
喉が渇いたときに甘いジュースを飲む習慣があると、気づかないうちに多くの糖質を摂取してしまいます。とくに、吸収の速い「果糖ブドウ糖液糖」などが含まれる清涼飲料水は血糖値を急激に上げるため、避けるべきです。
外出時には水筒などを活用し、無糖の飲み物を選ぶ習慣を身につけましょう。
関連記事:コーヒーは糖尿病の予防になる!血糖値との関係や適切な摂取量について
6-3.アルコールは適量を守って低血糖のリスクを知る
アルコールは適量を守り、空腹時の飲酒は避けることが大切です。アルコール自体は血糖値を直接上げませんが、肝臓での糖の生成を抑えるため、低血糖を引き起こすリスクがあります。
とくにインスリン注射や血糖降下薬を使用している方は、重篤な低血糖に陥る危険性があります。また、お酒と一緒に食べるおつまみは高カロリーになりやすいです。
飲酒する際は必ず食事と一緒に摂り、1日の適量を守ることが基本です。
関連記事:糖尿病とアルコールの関係とは?アルコールを摂り過ぎるとどうなる?
7.まとめ
糖尿病の食事療法は、合併症を予防し、健康的な生活を送るための基本的な治療法です。食事は血糖値に直接影響を与える最も重要な生活習慣であり、正しい知識を持って実践すれば、良好な血糖コントロールが可能となります。
浅草橋西口クリニックMoでは、糖尿病をはじめとしたさまざまな疾患に対しての診療をおこなっています。「糖尿病で生活が変化しないか不安」「早いうちから糖尿病を予防したい」などのお悩みがある方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
頴川博芸 エガワ ヒロキ 浅草橋西口クリニックMo 【経歴】 【資格・所属学会】
2016年 東海大学医学部医学科 卒業
2016年 順天堂大学医学部附属静岡病院 臨床研修医室
2017年 順天堂大学大学院医学研究科医学専攻(博士課程) 入学
2018年 順天堂大学医学部附属順天堂医院 消化器・低侵襲外科
2021年 順天堂大学大学院医学研究科医学専攻(博士課程) 修了
2021年 越谷市立病院 外科
2022年 順天堂大学医学部附属練馬病院 総合外科・消化器外科
2023年 順天堂大学医学部附属順天堂医院 食道・胃外科
2024年 浅草橋西口クリニックMo院長就任
日本専門医機構認定 外科専門医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
日本旅行医学会 認定医
東京都認知症サポート医
日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
日本温泉気候物理医学会
日本腹部救急医学会
日本大腸肛門病学会
順天堂大学医学部附属順天堂医院 食道・胃外科 非常勤医師
難病指定医
小児慢性特定疾病指定医
