糖尿病で痩せることはある?主な原因や治療法まで解説
「最近、ダイエットもしていないのに体重が減ってきた」と感じていませんか?もし意図せず痩せてきているなら、それは糖尿病が進行しているサインかもしれません。
そこでこの記事では、糖尿病と体重減少の関係を、主に以下3つの側面から解説していきます。
- なぜ糖尿病になると体重が減ってしまうのか
- 急に痩せたとき、糖尿病以外に考えられる原因
- 糖尿病を悪化させないための治療法
糖尿病で痩せてしまう理由を知り、どうすれば良いかを知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
1.糖尿病で痩せることはある?
糖尿病が原因で痩せることは実際にあります。これは病状がある程度進行し、体がエネルギーを正常に利用できなくなっているサインです。
健康的なダイエットとは異なり、食事をしっかり摂っているにもかかわらず体重が減っていく場合は、体内で深刻なエネルギー不足が起きている可能性があります。意図しない急激な体重減少は、糖尿病が悪化している危険な兆候のため、十分な注意が必要です。
1-1.糖尿病について
そもそも糖尿病とは、インスリンの不足により血糖値が高くなる病気です。診断基準は、空腹時血糖値126mg/dL以上、食後2時間後血糖値200mg/dL以上となります。
糖尿病には種類があり、1型、2型、その他の疾患、妊娠糖尿病の4種類に分けられます。このうち2型糖尿病は、食生活や運動不足、肥満が原因です。
糖尿病が進行すると、糖尿病性網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧などの合併症を引き起こすリスクがあり、注意が必要な病気です。
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1-2.糖尿病の危険な体重減少は「半年で体重の5%以上減少」が目安
医療機関を受診すべき危険な体重減少の目安は、「半年間で体重の5%以上」の減少です。これは医学的に意味のある体重減少とされる基準のひとつです。
たとえば体重60kgの人であれば、半年間で3kg以上自然に減少し、57kg以下になった場合がこれに該当します。
特別な食事制限や運動をしていないのに、この基準を超えて体重が減っていく場合は、糖尿病をはじめとする何らかの病気が隠れているサインかもしれません。放置せずに早めに医師に相談することをおすすめします。
2.糖尿病で痩せる主な原因
糖尿病で体重が減少する主な原因は、以下の3つです。
- エネルギー不足を補うため筋肉や脂肪が分解されている
- インスリンの作用不足でブドウ糖をエネルギーにできていない
- 尿から糖が排出されて摂取カロリーが失われている
それぞれ解説します。
2-1.エネルギー不足を補うため筋肉や脂肪が分解されている
体重が減少する一因は、体がエネルギー不足を補うために自らの筋肉や脂肪を分解し始めていることです。
インスリンの作用が不十分だと、食事から摂った糖を細胞がエネルギー源として利用できません。結果として体は生命活動を維持しようと、代替エネルギーとして筋肉や脂肪を分解してしまいます。この状態は体が飢餓状態に陥っているのと同じで、筋肉量が減ることで体重も減少します。
関連記事:食べたばかりなのにお腹がすくのは糖尿病のサイン?原因や対処法を解説
2-2.インスリンの作用不足でブドウ糖をエネルギーにできていない
インスリンの作用不足でブドウ糖をエネルギーに変換できていないことが、体重減少の根本的な原因です。
インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込み、エネルギーとして利用させるためのホルモンです。
糖尿病が進行するとインスリンの働きが悪くなるため、食事をしても糖が細胞に入らず血液中に溢れてしまいます。細胞レベルでエネルギー源が枯渇し、結果的に体重が減ってしまうのです。
2-3.尿から糖が排出されて摂取カロリーが失われている
尿と一緒に糖が排出され、摂取カロリーが失われていることも体重減少の原因です。
血液中に利用できない糖が増えすぎると、腎臓がそれを尿として体外に排出しようと働きます。本来エネルギーになるはずだった糖が吸収されずに排出されるため、たくさん食べていてもカロリー不足に陥ります。
摂取したカロリーが体内で活かされずに失われると、体重は減少しやすいです。
3.急に痩せる場合に考えられる糖尿病以外の原因
糖尿病以外の急に痩せる場合に考えられる原因は、以下の4つです。
- 代謝が異常に活発になる甲状腺の病気
- 栄養をうまく吸収できなくなる消化器の病気
- 体の栄養を消費してしまう悪性腫瘍(がん)
- 食欲の低下を招く精神的なストレスや病気
ひとつずつ解説します。
3-1.代謝が異常に活発になる甲状腺の病気
急な体重減少は、甲状腺の病気が原因かもしれません。甲状腺ホルモンが過剰に分泌される「甲状腺機能亢進症」などになると、全身の代謝が異常に活発になります。
安静時でも体がエネルギーを大量に消費する状態になり、食事量が増えても体重が減少する場合もあります。結果的に、代謝の異常が意図しない体重減少につながる場合があるため注意が必要です。
3-2.栄養をうまく吸収できなくなる消化器の病気
食べたものの栄養をうまく吸収できなくなる消化器の病気も、体重減少の原因となり得ます。
たとえば、胃潰瘍や慢性的な下痢、吸収不良症候群などがあると、食事から十分な栄養素を体内に取り込めません。どれだけ食べても栄養が体の外に出てしまうため、結果的に痩せてしまいます。
消化器系の不調が、体重減少という形で現れることも知っておきましょう。
3-3.体の栄養を消費してしまう悪性腫瘍
悪性腫瘍も、急な体重減少を引き起こす病気です。
がん細胞は増殖するために非常に多くのエネルギーを必要とします。体が本来使うべき栄養素ががん細胞に奪われるため、食欲があっても体重が減っていきます。
理由のわからない体重減少が見られる場合は、がんの可能性も考慮しておきましょう。
3-4.食欲の低下を招く精神的なストレスや病気
精神的なストレスや病気が、体重減少につながる場合もあります。これは、うつ病や摂食障害などになると、食欲そのものが低下してしまうためです。
たとえば、食べることへの関心が薄れたり、食べ物を受け付けなくなったりして、摂取カロリーが大幅に減ってしまいます。心の問題で食事が十分に摂れず、体重が落ちてしまうケースも少なくありません。
4.糖尿病の初期症状で太る場合もある
糖尿病の初期症状では、痩せるだけでなく逆に太るケースも珍しくありません。ここでは、なぜ糖尿病の初期に太ってしまうのか、そのメカニズムを解説します。
関連記事:【医師監修】糖尿病の初期症状とは?放置するとどうなる?
4-1.インスリンには脂肪の蓄積を促す作用がある
インスリンには、使いきれなかった糖を脂肪として体に蓄える働きがあります。
食事から摂った糖質が多いと、血糖値を下げるためにインスリンが大量に分泌され、余ったエネルギーが脂肪細胞に送り込まれます。その結果、体脂肪が増えて太りやすくなってしまうのです。
4-2.インスリン抵抗性の発生により太る
糖尿病の初期段階でインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」の状態になると、体が脂肪を溜め込みやすくなり体重が増加します。細胞に糖がうまく取り込めなくなると、血糖値を下げようとして膵臓が通常よりも多くのインスリンを分泌しようとするためです。
過剰なインスリンは脂肪の合成を強力に促すため、食べている量が変わらなくても太る原因になります。
4-3.食欲が増加し太る
そのほかに、糖尿病の初期段階で食欲が増加し、結果的に太る場合があります。糖尿病によって必要なエネルギーが細胞に届かないと、脳がエネルギー不足を感じて食欲を増進させるため、食べ過ぎてしまうためです。
インスリンの働きが悪いと、血液中に糖があっても細胞は飢餓状態のままです。そのため、どれだけ食べても満腹感を得られにくくなり、結果として過食につながり肥満を招いてしまいます。
5.糖尿病で痩せている方に対する治療
糖尿病で痩せている方に対する治療は、これ以上体重を減らさないように配慮しながら血糖コントロールをおこないます。肥満の方とは異なり、筋肉量を維持しながら健康的な体を目指す必要があるからです。
痩せ型の方に向けた主な治療法を3つご紹介します。
関連記事:糖尿病の治し方はある?糖尿病と診断された場合の管理方法を解説
5-1.運動療法
運動療法は、筋肉を維持しインスリンの働きを良くするために有効な治療法です。痩せている人は筋肉量が少ない傾向にあるため、無理のない範囲で筋力をつける運動を指導されます。
筋肉がつくとブドウ糖が消費されやすくなり、血糖値の安定につながるのがメリットです。
5-2.薬物療法
食事や運動だけでは血糖値が下がらない場合、薬物療法を取り入れてコントロールします。飲み薬やインスリン注射を使って、不足しているインスリンの働きを補います。
患者さんの体質や病状に合わせて適切な薬が選ばれるため、必ず医師の指示に従うようにしてください。
5-3.食事療法(場合による)
痩せている方の食事療法では、単にカロリーを減らすのではなく、筋肉を落とさないための栄養摂取が重要になります。エネルギー不足はさらなる体重減少を招くため、バランスの良い食事で必要な栄養をしっかり摂らなければならないのです。
自己判断で食事量を減らすことは避け、管理栄養士などの指導を受けるようにしましょう。
関連記事:糖尿病と食事の関係とは?食事療法の原則や注意すべきポイントを解説
6.糖尿病による体重減少を感じたらすぐに病院へ
糖尿病が疑われる意図しない体重減少に気づいたら、自己判断せず速やかに医療機関を受診してください。その体重減少は、病状が進行しているサインである可能性が高いです。
専門医による正確な診断と早期の治療開始が、合併症の予防になります。もし体に異変を感じたら、放置せずに必ず医師に相談しましょう。
6-1.痩せる以外の糖尿病の症状
糖尿病の症状は体重減少だけでなく、以下のようなものもあります。
- 多尿:高血糖により腎臓が糖を排出しようとして、頻繁に尿が出るようになります。
- のどの渇き:多尿による水分の喪失が原因で、強い渇きを感じます。
- 疲れやすい:血糖値が高いため、エネルギーがうまく使われず、疲れやすくなります。
- 視力のぼやけ:血糖値が高いと目の水晶体が変形し、視力がぼやけることがあります。
- 傷が治りにくい:高血糖が免疫機能を低下させ、傷の治りが遅くなります。
- 手足のしびれや痛み:神経障害が進行すると、しびれや痛みを感じることがあります。
これらの症状は糖尿病が進行するとさらに悪化することがあるため、早期に医師の診断を受けることが重要です。
関連記事:糖尿病かと思ったらどうする?初期症状や何科を受診すべきかなど解説
7.糖尿病と体重減少に関するよくある質問
糖尿病と体重減少に関するよくある質問を以下にまとめました。
7-1.糖尿病は痩せると治るのでしょうか?
「病的な体重減少」と「肥満解消のための減量」はまったく別のものであり、糖尿病は「完治」する病気ではありません。病的に痩せてしまうのは、体が悲鳴を上げているサインにほかなりません。
肥満の人が減量して血糖値が改善することはありますが、それは病気が治ったわけではなく、糖尿病がコントロールされた状態です。糖尿病は生涯にわたって管理が必要な病気であると理解することが大切です。
7-2.体重減少は体のどの部分から起こりますか?
糖尿病による病的な体重減少では、主に筋肉から分解されていく傾向があります。体はエネルギー不足を補うため、手早く分解できるタンパク質、つまり筋肉をエネルギー源として利用し始めます。
脂肪も減少しますが、筋肉量の低下が顕著に現れることが多く、見た目がやつれたような印象になりやすいのが特徴です。
7-3.もともと痩せ型の場合はどうすればよいですか?
もともと痩せ型の糖尿病患者さんは、さらなる体重減少を避け、筋肉量を維持するための専門的な管理が必要です。痩せ型の人は体に蓄えられているエネルギー源が少ないため、体重減少がより深刻な状態につながりやすいです。
食事療法でも単にカロリーを制限するのではなく、筋肉を維持するための栄養摂取が重要になります。自己判断で食事を減らさず、必ず医師や管理栄養士に相談してください。
8.まとめ
糖尿病の方は、以下のような理由から体重が減少することがあります。
- エネルギー不足を補うため筋肉や脂肪が分解されている
- インスリンの作用不足でブドウ糖をエネルギーにできていない
- 尿から糖が排出されて摂取カロリーが失われている
糖尿病で意図せず痩せるのは、病状が進行している危険なサインです。「半年で5%以上」の体重減少など、体に異変を感じたら決して放置しないでください。
浅草橋西口クリニックMoでは、糖尿病をはじめとしたさまざまな疾患に対しての診療をおこなっています。「糖尿病で生活が変化しないか不安」「早いうちから糖尿病を予防したい」などのお悩みがある方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
頴川博芸 エガワ ヒロキ 浅草橋西口クリニックMo 【経歴】 【資格・所属学会】
2016年 東海大学医学部医学科 卒業
2016年 順天堂大学医学部附属静岡病院 臨床研修医室
2017年 順天堂大学大学院医学研究科医学専攻(博士課程) 入学
2018年 順天堂大学医学部附属順天堂医院 消化器・低侵襲外科
2021年 順天堂大学大学院医学研究科医学専攻(博士課程) 修了
2021年 越谷市立病院 外科
2022年 順天堂大学医学部附属練馬病院 総合外科・消化器外科
2023年 順天堂大学医学部附属順天堂医院 食道・胃外科
2024年 浅草橋西口クリニックMo院長就任
日本専門医機構認定 外科専門医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
日本旅行医学会 認定医
東京都認知症サポート医
日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
日本温泉気候物理医学会
日本腹部救急医学会
日本大腸肛門病学会
順天堂大学医学部附属順天堂医院 食道・胃外科 非常勤医師
難病指定医
小児慢性特定疾病指定医
