下痢で病院に行く目安【大人の場合】
下痢で病院に行く目安(大人の場合)を知りたいと悩んでいませんか?
下痢が続く時は、原因や対処法というものがございますので、あらかじめ知っておく必要があります。
本記事では、下痢が続く時の原因と併せて、下痢を早く治す方法や応急的な対応についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
なお、当院(浅草橋西口クリニックMo 内科・泌尿器科・皮膚科)では数多くの下痢で困っている患者様が受診され、検査・診断・治療、療養上のアドバイス・診療を行っております。それらの知見も含めてご説明します。
下痢が続く
そもそも下痢とはどういったものなのでしょうか?
【下痢とは】
下痢とは、通常の排便よりも頻繁で、便の形状が緩くなり、水っぽくなる状態を指します。
下痢は一時的なものから長期間続くものまで、さまざまな原因で引き起こされます。
下痢の起こるメカニズムは、腸管の正常な運動や水分吸収に影響を及ぼす要因によります。
また、下痢は、持続する期間によって急性下痢症と慢性下痢症に分類されます。
【急性下痢症】
急性下痢症は、はっきりとした定義はありませんが、突然発症し、短期間(通常は数日から1週間程度)続く下痢の状態を指します。
急性下痢症は数日で軽快することが多いです。
日本では、ほとんどの下痢症がこの急性下痢症です。
【慢性下痢症】
慢性下痢症は、回数によらず、4週間以上続く軟便と定義されています。
日本などの先進国における有病率は約3~5%と低く、ここまで下痢が長引くのは珍しいです。
下痢の原因【重要な8つの原因】
【1】心因性(ストレスや不安)
下痢はストレスや不安も関係しています。
精神的なストレスや不安が腸の動きに影響を与えることで起こります。
腸と脳は密接に関連しており、「腸脳相互作用」と呼ばれるメカニズムによって相互に影響を及ぼしています。
ストレスや不安は腸の運動を変化させ、下痢を引き起こすのです。
ストレスや不安による下痢の主なメカニズムをいくつか説明します。
① 自律神経の影響
自律神経は体の自動的な機能を調節する役割を果たしています。
ストレスや不安が増すと、交感神経が活発になり、腸の動きが加速します。
これにより、腸の内容物が早く移動し、十分な水分の吸収が行われないために下痢が引き起こされます。
② 腸の過敏性
ストレスや不安が腸の過敏性を引き起こすことがあります。
これは腸粘膜が通常よりも過敏に反応する状態であり、小さな刺激でも腸の運動が増加するため、下痢を引き起こす可能性があります。
③ 腸内細菌叢の変化
ストレスや不安が腸内細菌叢に影響を与えることがあります。
健康な腸内細菌叢が乱れると、腸の正常な機能・分泌が乱れ、下痢が起こる可能性が高まります。
④ 腸と脳の相互作用
ストレスや不安は脳に直接的な影響を与え、ストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンが放出されます。
これらのホルモンは腸の運動を変化させる可能性があります。
【2】食品摂取【7つの食品】
特定の食品は、消化器官を刺激し、下痢を引き起こすことがあります(食あたり)。
① 脂っこい食べ物
高脂肪な食品を摂取した後に腸の運動が異常に促進され、腸内の内容物が早く腸を通過することで下痢が起こりえます。
この状態では、消化器官が過度の刺激を受け、正常な水分の吸収が行われずに水っぽい便が排出されることがあります。
特に暴飲暴食は控えましょう。
② 香辛料
特定の香辛料の摂取によって、下痢が引き起こされる可能性があります。
香辛料は食品に風味や辛味を加えるために使われますが、一部の人は特定の香辛料に対して敏感であり、消化器官を刺激して下痢を引き起こすことがあります。
主な原因として、カプサイシンやシリアルポリフェノールなどのような香辛料が挙げられます。
③ カフェイン
カフェインによる下痢は、一部の人にとって見られる症状であり、カフェインを摂取した後に下痢が発生します。
カフェインは一般的にコーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれており、中枢神経刺激薬として知られています。
しかし、一部の人はカフェインに対して敏感であり、消化器官を刺激して下痢を引き起こすことがあります。
④ アルコール
アルコールによる下痢は、一部の人にとって見られる症状であり、アルコールを摂取した後に緩く水っぽい便が頻繁に発生します。
アルコールによる下痢は、アルコールによるお腹への刺激・腸の過敏性、アルコールに含まれる成分、アルコールの影響による腸内細菌叢の変化などによって引き起こされる可能性があります。
⑤ 加工食品
加工された食品を摂取した後に下痢が発生することがあります。
加工食品は保存性や調理の便利さなどの利点がありますが、一部の加工食品には添加物や化学物質、高脂肪・高糖分が含まれている場合があります。
これらの成分が腸を刺激し、腸の運動を促進することで下痢が起こる可能性があります。
⑥ 人工甘味料
人工甘味料による下痢は、一部の人にとって見られる症状であり、人工甘味料を摂取した後に下痢が発生することがあります。
人工甘味料は、低カロリーの代替甘味料として使用されることがありますが、一部の人には消化器官に対して刺激を与え、下痢を引き起こす可能性があります。
人工甘味料による下痢の主な原因は、人工甘味料による腸の刺激・腸内細菌叢の変化、過剰摂取による胃腸への負担の増加・胃腸機能の低下などがあります。
⑦ 乳製品
乳製品を摂取した後に下痢が発生する可能性があります。
乳製品には乳糖という糖質が含まれており、これを消化するために必要な酵素である乳糖分解酵素(ラクターゼ)を一部の人が不十分に産生している場合、乳糖不耐症と呼ばれる状態が発生します。
乳糖不耐症の人は乳糖を消化できないため、乳製品を摂取すると腸内で乳糖が発酵され、ガスや水分を生じて下痢や膨満感が起こる可能性があります。
【3】薬剤
一部の薬剤は下痢を引き起こすことがあります。
① 緩下剤
下剤や便秘薬などは腸の運動を刺激したり、便を柔らかくして排便を促すため、過剰に使用すると下痢が起こる可能性があります。
② 抗菌薬
一部の抗生物質は腸内細菌叢を変化させ、下痢を引き起こすことがあり、注意が必要です。
下痢を起こしやすい抗生物質は主に以下のものが挙げられます。
- アモキシシリンなどのペニシリン系抗生物質
- セファレキシン、セファクロルなどのセフェム系抗生物質
- アジスロマイシン、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質
- シプロフロキサシン、レボフロキサシンなどのフルオロキノロン系抗生物質
③ 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
NSAIDsは胃腸への刺激を与え、消化器官の運動を促進し、下痢を引き起こすことがあります。
【4】感染性腸炎
感染症による下痢は最も一般的な原因の一つです。
ウイルス、細菌、寄生虫などが消化管に感染し、腸の運動を刺激したり、水分の吸収を妨げることで下痢を引き起こします。
ウイルス性腸炎(胃腸炎)
ウイルス性腸炎は、ウイルスによって引き起こされる腸の感染症の一種です。
主にノロウイルスやロタウイルスなどのウイルスが原因となります。
ウイルス性腸炎は一般的に胃腸炎とも呼ばれ、下痢、吐き気・嘔吐、腹痛、発熱などの症状を引き起こします。
ウイルス性腸炎は、感染者の便や嘔吐物を介して口から摂取されることで感染が広がります。
感染経路としては、感染者との直接接触や感染者が触れた物に触れた後に口を触れることなどが挙げられます。
特に飲食物や水の衛生管理が不十分な状況で感染が起こりやすくなります。
ウイルス性腸炎の予防には、適切な手洗い、衛生的な飲食物の摂取を心掛ける、感染者との接触を避けるなどのような対策が重要です。
細菌性腸炎
細菌性腸炎は、細菌によって引き起こされる腸の感染症・食中毒の一種です。
一般的な細菌性腸炎の原因としては、サルモネラ菌、大腸菌(特にO157)、シガトキシン産生性大腸菌、カンピロバクター菌、シゲラ菌などが挙げられます。
これらの細菌が腸に感染することで、腸の炎症や運動亢進が起こり、下痢や腹痛、血便、嘔吐、発熱などの症状が現れます。
細菌性腸炎の感染経路は、感染者の便や汚染された食品、水の摂取などを通じて口から摂取されることで感染が広がります。
特に食品の調理や保存、水の消毒などをしっかり行わない状況で感染が起こりやすくなります。
細菌性腸炎の予防には、ウイルス性腸炎同様、適切な手洗い、衛生的な飲食物の摂取を心掛ける、感染者との接触を避けるなどのような対策が重要です。
【5】過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は、腸の機能に関連する慢性的な消化器疾患の一つです。
一般的に、過敏性腸症候群は腸の運動が異常なために腸の機能が乱れ、腹痛、腹部膨満感、便秘、下痢、またはそれらの症状の交互に現れる特徴的な症候群を引き起こします。
過敏性腸症候群の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、腸の運動の乱れ、精神的ストレス、食事や生活習慣などの要因が関与しているとされています。
【6】炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、慢性的な炎症性腸疾患の一種で、主に大腸(結腸)に炎症が生じる病気です。
潰瘍性大腸炎では、大腸の内膜が潰瘍(ただれ)を生じることが特徴であり、炎症が続くことで症状が悪化します。
潰瘍性大腸炎の主な症状は、頻繁な下痢や血便、腹痛、腹部膨満感、体重減少などが挙げられます。
潰瘍性大腸炎は慢性的な疾患であり、炎症が続くため症状が繰り返し現れることがあります。
炎症の範囲や重症度によって症状の程度が異なります。
また、ストレスや食事などの要因が症状を悪化させることもあります。
クローン病
クローン病は、慢性的な炎症性腸疾患の一つであり、主に消化器官のどこかに炎症が生じる病気です。
クローン病では、消化管のどこからでも発症することがありますが、特に小腸と大腸の結腸部分に炎症が生じることがよくあります。
潰瘍性大腸炎の主な症状は、潰瘍性大腸炎同様、頻繁な下痢や血便、腹痛、腹部膨満感、体重減少などが挙げられます。
クローン病は慢性的な疾患であり、炎症が続くため症状が繰り返し現れることがあります。
症状の程度や範囲は個人によって異なります。
また、ストレスや食事などの要因が症状を悪化させることもあります。
【7】虚血性腸炎
虚血性腸炎は、腸の血流が一時的または永続的に減少することによって引き起こされる炎症性疾患です。
腸に酸素や栄養を供給する血流が減少すると、腸の組織が損傷を受け、炎症が生じます。
この炎症によって腸の壁が傷つき、下痢や腹痛、血便、腹部膨満感、発熱などの症状が発生することがあります。
高齢者に多いとされています。
【8】大腸がん
大腸がん(大腸・直腸がん)は、大腸や直腸に発生する悪性の腫瘍です。
ポリープが発生母地になることがあります。
大腸がんによる症状は、特定の病期・経過や病変の位置によって変わりますが、一般的な症状は下痢や便秘、血便、腹痛、腹部膨満感、体重減少などです。
大腸がんは早期には症状を引き起こしにくいことがありますが、放置し進行すると上記の症状が現れるリスクがあります。
発見するための検査には専門医による大腸カメラ(内視鏡検査)での観察などがあります。
下痢の【対処法・治療】
下痢を早く治すには
① 水分補給
水分を十分に摂ることが重要です。
下痢は体内の水分を失いやすくなりますので、脱水を防ぐために水や経口補水液をこまめに摂りましょう。
② 安静
体を休めることで回復が早まることがあります。
特に腸の安静を保つ事が重要です。
腸の安静を保つには経口摂取を一切しないことが最もよいですが、点滴をしていない状態ではそうはいきません。
水分摂取や以下のような食事の見直しを行って、出来る限り多くの時間、腸の安静を目指すようにしましょう。
③ 食事の見直し
下痢が続く場合、刺激物を避けて消化しやすい食事に切り替えることが役立ちます。
白米、うどん、バナナ、りんごなどは消化が比較的軽い食品です。
④ 整腸剤の服用
整腸剤は、腸の運動を調整し、過剰な運動を抑えることで下痢を緩和する効果があります。
腸の運動が適切に調整されることで、腸内容物の通過がスムーズに行われるようになります。
また、下痢による腹痛や腹部不快感も、整腸剤によって改善されることがあります。
腸の働きが安定し、痛みを和らげる効果が期待されます。
下痢止めを使ったほうがよいか?
一般的に、下痢は体の一つの防御メカニズムであり、体内に異物や病原体が入り込んだ場合に体外に排出する役割を果たしています。
したがって、下痢が発生する場合には、体が何らかの問題に対処している可能性があり、基本的には無理に下痢を抑えるべきではありません。
ただし、下痢があまりに頻回で日常生活や仕事に支障を及ぼすようであれば、下痢止めの薬を使用して、下痢を抑える必要があります。
医療機関を受診すべきケース
以下のような症状がある場合は、早めに病院に相談してください。
- 高熱がある
- 血便や黒い便が出る
- 4週間以上下痢が続く(慢性下痢症の時)
- 強い腹痛や脱水症状が見られる
- 食欲不振や体重減少が起こる
【まとめ】
いかがでしたでしょうか。
本記事では、下痢が続く時の原因から、下痢を早く治す方法や応急的な対応についても記述させていただきました。
下痢は一般的で非常によくある病気なので、お困りの方は多いと思います。
下痢でお困りの際は、是非当院(浅草橋西口クリニックMo 内科・泌尿器科・皮膚科)にご相談ください。
※WEB予約も受け付けております。
頴川博芸 エガワ ヒロキ
浅草橋西口クリニックMo
【経歴】
2016年 東海大学医学部医学科 卒業
2016年 順天堂大学医学部附属静岡病院 臨床研修医室
2017年 順天堂大学大学院医学研究科医学専攻(博士課程) 入学
2018年 順天堂大学医学部附属順天堂医院 消化器・低侵襲外科
2021年 順天堂大学大学院医学研究科医学専攻(博士課程) 修了
2021年 越谷市立病院 外科
2022年 順天堂大学医学部附属練馬病院 総合外科・消化器外科
2023年 順天堂大学医学部附属順天堂医院 食道・胃外科
2024年 浅草橋西口クリニックMo院長就任
【資格・所属学会】
日本専門医機構認定 外科専門医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
日本旅行医学会 認定医
東京都認知症サポート医
日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
日本温泉気候物理医学会
日本腹部救急医学会
日本大腸肛門病学会
順天堂大学医学部附属順天堂医院 食道・胃外科 非常勤医師
難病指定医
小児慢性特定疾病指定医