妊娠糖尿病にひっかからないためには?食事のポイントやなりやすい人
「妊娠糖尿病にひっかからないためには?」「妊娠糖尿病にひっかからないための食事や生活習慣を知りたい」「妊娠糖尿病が母体や赤ちゃんに及ぼす影響を知りたい」と思っていませんか?
妊娠糖尿病は特別な病気ではなく、妊娠中のホルモンの影響で誰にでも起こりうるものです。ですが、その多くは食事や運動といった日々の生活習慣を見直すことで、十分に予防・管理が可能です。
この記事では、妊娠糖尿病にひっかからないためにはどうしたら良いのか、注意すべき食事のポイントまで紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
1.妊娠糖尿病にひっかからないために知るべき基礎知識
妊娠糖尿病にひっかからないために知るべき基礎知識は、以下のとおりです。
- 妊娠糖尿病とは
- 妊娠糖尿病の原因
- 検査には糖負荷試験が用いられる
- 妊娠糖尿病がママと赤ちゃんに与える影響
それぞれ解説します。
1-1.妊娠糖尿病とは
妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見または発症した、糖の代謝異常のことです。具体的には、血糖値を下げるインスリンというホルモンが効きにくくなり、血液中の糖分が処理しきれなくなります。
これまで糖尿病と診断されたことがなくても、妊娠をきっかけに血糖値が高くなるケースがこれにあたるため、もともと健康な方でも血糖値の管理が重要です。
1-2.妊娠糖尿病の原因
妊娠糖尿病の主な原因は、胎盤から分泌されるホルモンがインスリンの働きを弱めてしまうことです。妊娠が進むと、HPL(ヒト胎盤ラクトーゲン)といったホルモンが、赤ちゃんに十分な栄養を届けるために血糖値を上げようとします。
その結果、インスリンを分泌しても血糖値が下がりにくくなる「インスリン抵抗性」という状態に陥りやすくなります。この妊娠中の自然な体の変化が、血糖コントロールを難しくする大きな要因です。
関連記事:糖尿病の原因や予防する方法とは?糖尿病になりやすい人の特徴まで解説
1-3.検査には糖負荷試験が用いられる
妊娠糖尿病の診断には、「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」という精密検査がおこなわれます。この検査は、妊婦健診の血液検査などで高血糖の疑いがあった場合に、より正確な診断を下すために必要です。
空腹の状態でブドウ糖液を飲み、1時間後、2時間後と血糖値の推移を測定します。これにより、体が糖を処理する能力がどの程度あるかを詳しく調べられます。
1-4.妊娠糖尿病がママと赤ちゃんに与える影響
妊娠糖尿病は、ママと赤ちゃんの両方に影響を及ぼす可能性があります。
高血糖の状態が続くと、母体には妊娠高血圧症候群や羊水量の異常といったリスクが高まります。また、赤ちゃんにはお腹の中で大きくなりすぎて難産になったり、出生後に低血糖を起こしたりする可能性があります。
だからこそ、母子の健康を守るために、妊娠糖尿病の予防と早期発見、そして適切な管理が大切です。
2.妊娠糖尿病にひっかからないために注意すべき食事のポイント
妊娠糖尿病にひっかからないために注意すべき食事のポイントは、以下の4つです。
- 血糖値を上げにくくする食べ方の基本
- 妊娠糖尿病にひっかからないために積極的に摂りたい食材
- 妊娠糖尿病にひっかからないために注意したい食材
- おやつ・間食と上手に付き合う
ひとつずつ解説します。
関連記事:糖尿病の方が食べてはいけないものはある?食事の注意点も徹底解説
2-1.血糖値を上げにくくする食べ方の基本
まず、血糖値を上げにくくする食べ方の基本として、以下の3点を解説します。
- 血糖値の急上昇を抑える「食べる順番」
- 1日の食事を小分けにする「分割食」
- 満腹感を得やすくなる「噛む回数と食事時間」
詳しくみていきます。
2-1-1.血糖値の急上昇を抑える「食べる順番」
食事の際は「野菜・きのこ類」など食物繊維が豊富なものから食べることで、血糖値の急上昇を効果的に抑えられます。
食物繊維が糖の吸収を緩やかにし、同じ内容の食事でも血糖値の上昇カーブが穏やかになります。具体的には「①野菜・海藻」→「②肉・魚などのたんぱく質」→「③ごはん・パンなどの炭水化物」の順番を理想とし、今日からの食事で「ベジタブルファースト」を実践してみてください。
2-1-2.1日の食事を小分けにする「分割食」
1日の総摂取カロリーは変えずに食事回数を増やす「分割食」は、血糖値の安定に有効です。一度にたくさん食べると血糖値が急上昇しやすくなりますが、食事を分けることで上昇幅を小さくできます。
たとえば、朝・昼・晩の3食に加え、10時と15時、夜食などにおにぎりやヨーグルトを少し食べるイメージです。この方法は空腹感を抑え、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できます。
2-1-3.満腹感を得やすくなる「噛む回数と食事時間」
よく噛んでゆっくり食べることも、血糖コントロールの重要なポイントです。時間をかけて食事をすると満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防ぐ効果があります。
また、早食いは食後の血糖値を急上昇させる原因にもなりやすいです。一口あたり30回を目安によく噛み、20分以上かけて食事を楽しむことを意識するだけで、体への負担は大きく変わります。
2-2.妊娠糖尿病にひっかからないために積極的に摂りたい食材
妊娠糖尿病にひっかからないために積極的に摂りたい食材は、以下の2つです。
- 糖の吸収を緩やかにする「食物繊維」
- 血糖値が上がりにくい「低GI食品」
ひとつずつ解説します。
2-2-1.糖の吸収を緩やかにする「食物繊維」
野菜やきのこ、海藻などに豊富な食物繊維には、食後の血糖値上昇を緩やかにする効果があります。食物繊維は、胃や腸で水分を吸収して膨らみ、糖質の消化・吸収スピードを遅らせる働きをします。
そのほか、わかめやきのこをたっぷり入れた味噌汁や、野菜サラダを食事の最初に取り入れるのもおすすめです。毎日の食事に食物繊維をプラスワンする習慣をつけましょう。
2-2-2.血糖値が上がりにくい「低GI食品」
玄米や全粒粉パンなどの「低GI食品」は、食後の血糖値が上がりにくいため、主食の置き換えに有効です。GI(グリセミック・インデックス)とは食後の血糖値の上昇度合いを示す指標で、この値が低い食品ほど血糖値が緩やかに上昇します。
白米や食パンはGI値が高い食品なため、これらを玄米やライ麦パンなどに変えるのが良いでしょう。主食を見直すことは、血糖コントロールにおいて効果的なアプローチです。
2-3.妊娠糖尿病にひっかからないために注意したい食材
妊娠糖尿病にひっかからないために注意したい食材は、以下の2つです。
- お菓子やジュースなどの「単純糖質」
- 果物の「量」と「食べる時間」
それぞれ解説します。
2-3-1.お菓子やジュースなどの「単純糖質」
お菓子やジュースといった、血糖値を急激に上げやすい糖質の種類を知り、食べる量や時間に注意することが大切です。
すべての糖質が悪いわけではなく、特に精製された砂糖などの「単純糖質」は吸収が速く、血糖値の乱高下を招きやすいため注意が必要です。また、健康的なイメージのある果物も、量や食べ方には配慮が求められます。
食材の特性を理解し、上手に付き合っていく意識を持ちましょう。
2-3-2.果物の「量」と「食べる時間」
砂糖が多く含まれるお菓子や清涼飲料水は、血糖値を急上昇させます。なるべく控えるようにしてください。
お菓子や清涼飲料水に含まれる砂糖は「単純糖質」と呼ばれ、体への吸収が非常に速いという特徴があります。そのため摂取するとすぐに血糖値が跳ね上がり、インスリンを分泌するすい臓に大きな負担をかけてしまいます。
ストレスのない範囲で、まずは飲む物を水やお茶に変えることから始めてみましょう。
2-4.おやつ・間食と上手に付き合う
果物に含まれる果糖も血糖値を上げるため、摂取量と食べる時間に工夫が必要です。果物はビタミンや食物繊維が豊富ですが、糖質も多く含んでいるため「食べ過ぎ」は禁物となります。
1日の目安量は片手に乗る程度(約200g)とし、血糖値が上がりやすい夜遅い時間帯は避けるのが望ましいです。健康のためにも、果物は適量を適切な時間に楽しむようにしましょう。
関連記事:糖尿病でもお菓子は食べていい?間食するときの注意点7選も解説
3.食事以外で妊娠糖尿病にひっかからないために改善できること
食事以外で妊娠糖尿病にひっかからないために改善できることは、以下の3つです。
- 適度な運動
- 適切な体重管理
- 生活習慣全般の改善
ひとつずつ解説します。
3-1.適度な運動
医師の許可のもとでおこなう適度な運動は、血糖値を下げる効果があり、安全なマタニティライフにも繋がります。運動は、血液中の糖分を筋肉で消費させることで、直接的に血糖値を下げる働きがあるためです。
適度な運動について、詳しく紹介していきます。
- 妊娠中の運動が血糖管理に効果的な理由
- 妊婦でも安心してできる運動とは
- 運動の推奨頻度とタイミングについて
- 医師の許可を得て、安全に実施することが重要
- 妊娠中の運動が心身の健康をサポートする理由
- 妊娠前に運動習慣があった場合はどうか?
- 妊娠前に運動していなかった場合の対策は?
それぞれ解説します。
3-1-1.妊娠中の運動が血糖管理に効果的な理由
運動によって血液中のブドウ糖が筋肉で消費され、インスリンの働きが改善されるため、血糖値が下がりやすくなります。体を動かすと、筋肉はエネルギー源として血液中のブドウ糖を取り込みます。
その結果、食後の血糖値上昇が抑えられるだけでなく、運動を継続することでインスリンが効きやすい体質(インスリン感受性の改善)につながりやすいです。妊娠中の運動が血糖コントロールに有効とされる主な理由です。
3-1-2.妊婦でも安心してできる運動とは
ウォーキングやマタニティヨガ、スイミングなど、体に負担の少ない有酸素運動が推奨されます。これらの運動は、関節への負担が少なく、お腹が大きくなっても続けやすいのがメリットです。
とくにウォーキングは特別な道具も必要なく、今日からでも手軽に始められるためおすすめです。自身の体力や体調に合わせて、楽しめる運動を見つけることが長続きの秘訣です。
3-1-3.運動の推奨頻度とタイミングについて
食後30分~1時間後のタイミングで、1回30分程度の運動を週に3~4回おこなうのが効果的です。食後は血糖値が上がり始める時間帯のため、このタイミングで運動をすると血糖値の上昇を効率よく抑えられます。
毎日おこなう必要はなく、まずは無理のない頻度から始めてみてください。大切なのは、短時間でも良いので継続して習慣にすることです。
3-1-4.医師の許可を得て、安全に実施することが重要
運動の開始前は、必ず主治医に相談し、許可を得ることが大前提です。妊娠の経過は一人ひとり異なり、切迫早産のリスクなど、運動が勧められない場合もあります。
そのため、自己判断で運動を始めるのは絶対に避けましょう。医師から運動の許可が出た場合も、体調が優れない日は無理せず休むなど、安全を第一に考えることが最も大切です。
3-1-5.妊娠中の運動が心身の健康をサポートする理由
妊娠中の運動は血糖管理だけでなく、体重コントロール、ストレス解消、体力維持など、心身両面に多くのメリットをもたらします。体を動かすことで気分転換になり、マタニティブルーの予防・緩和にもつながります。
また、出産や産後の育児に必要な体力をつけるうえでも有効です。運動は、心と体の両方を健やかに保つためには重要です。
3-1-6.妊娠前に運動習慣があった場合はどうか?
妊娠前から運動習慣があった方は、医師に確認のうえで運動の種類や強度を調整すれば、多くの場合で継続が可能です。ただし、妊娠中はホルモンの影響で靭帯が緩みやすくなっているため、怪我には十分な注意が必要です。
また、ジョギングをウォーキングに変えるなど、体に負担の少ない種目に切り替えることを検討しましょう。これまで通りではなく、今の体の状態に合わせた運動を心がけることが重要です。
3-1-7.妊娠前に運動していなかった場合の対策は?
これまで運動習慣がなかった方は、散歩など日常生活の中で少し動くことから始め、無理のない範囲で徐々に習慣化していくことが大切です。いきなりハードな運動を始める必要はまったくありません。
たとえば、エレベーターを階段に変える、一駅手前で降りて歩くなど、小さな工夫からで十分です。まずは「座っている時間を減らす」ことを意識するだけでも、良い第一歩になります。
3-2.適切な体重管理
妊娠中の急激な体重増加は、妊娠糖尿病の大きなリスク要因となるため、適切な体重増加の範囲を知り、自己管理することが重要です。体重が増えすぎるとインスリンの働きが悪くなり、血糖値が上がりやすくなってしまいます。
妊娠前の体格(BMI)によって推奨される体重増加量は異なるため、まずは自分の適正範囲を医師や助産師に確認しましょう。日々の体重測定を習慣にすることが、血糖値コントロールの基本です。
3-3.生活習慣全般の改善
十分な睡眠を取り、ストレスを溜めないようにするなど、規則正しい生活リズムを整えることも血糖値の安定に役立ちます。
睡眠不足やストレスは、血糖値を上げるホルモン(コルチゾールなど)の分泌を促し、血糖コントロールを乱す原因です。リラックスできる時間を作ったり、早寝早起きを心がけたりすることも、食事や運動と同じくらい大切な予防策です。
4.妊娠糖尿病になりやすい人の特徴
妊娠糖尿病になりやすい人の特徴は、以下の3つです。
- 生まれ持った体質や遺伝が関係する
- 過去の妊娠・出産経験が影響する
- 今回の妊娠経過で医師に指摘された
ひとつずつ解説します。
4-1.生まれ持った体質や遺伝が関係する
家族に糖尿病の方がいる、肥満傾向(BMI25以上)、35歳以上の高年齢での妊娠などは、リスク因子として挙げられます。これらの要因は、もともとインスリンの働きが弱かったり、効きにくかったりする体質と関連があるためです。
とくに近親者(両親や兄弟)に糖尿病患者がいる場合は遺伝的な影響を受けやすいと考えられており、該当する方はとくに注意深い生活習慣の管理が望まれます。
4-2.過去の妊娠・出産経験が影響する
前回の妊娠で妊娠糖尿病と診断された経験がある場合、次の妊娠でも再発する可能性は高くなります。また、原因不明の習慣性流早産歴や、4,000g以上の巨大児を分娩した経験がある方も注意が必要です。
これらは、過去の妊娠時にすでに糖代謝異常の傾向があった可能性を示唆しています。過去の経験も、今回の妊娠における重要な情報となります。
4-3.今回の妊娠経過で医師に指摘された
妊娠初期の検査で尿糖が陽性だった、急激に体重が増加している、羊水過多を指摘された、といった状況も注意が必要です。たとえば、現時点で既に血糖値が高めである、あるいはインスリンが効きにくい状態になっている可能性を示している場合があります。
妊婦健診での指摘は体からの重要なメッセージと捉え、これを機に生活習慣を改めて見直すことが大切です。
5.【妊娠の段階別】妊娠糖尿病検査にひっかからないためのポイント
妊娠糖尿病検査にひっかからないためのポイントを、以下の段階に分けて紹介していきます。
- つわりが辛い「妊娠初期」
- 体重が増えやすい「妊娠中期〜後期」
それぞれ解説します。
5-1.つわりが辛い「妊娠初期」
つわりで食事が偏りがちな時期でも、甘いジュースの飲み過ぎなど、血糖値が急上昇しやすい習慣には注意が必要です。食べられるものが限られるなかで、口当たりの良いジュースやゼリーに頼ってしまうことは少なくありません。
しかし、これらは血糖値を急激に上げるため、飲み過ぎ・食べ過ぎは禁物です。水分補給は水やお茶を中心にするなど、できる範囲で工夫することが大切です。
5-2.体重が増えやすい「妊娠中期〜後期」
検査直前に慌てるのではなく、日頃からバランスの取れた食事と適度な運動を心がけることが、最善の「検査対策」です。つわりが落ち着き食欲が増すこの時期は、体重が急激に増えやすいタイミングであり、妊娠糖尿病のリスクも高まります。検査のためだけでなく母子の健康のために、妊娠期間を通じて継続的に生活習慣を整えていく意識が重要です。日々の積み重ねが、何よりの予防につながります。
6.もし妊娠糖尿病にひっかかったら
もし妊娠糖尿病と診断されても、過度に心配する必要はありません。基本的には、医師や管理栄養士の指導のもとで適切に管理することで、安全に出産できるケースがほとんどです。
治療の基本は食事療法と運動療法で、それでも血糖コントロールが難しい場合には、赤ちゃんへの影響が少ないインスリン注射を使用することもあります。大切なのは、一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら着実に取り組むことです。
7.まとめ
妊娠糖尿病は特別な病気ではなく、妊娠中のホルモンの影響で誰にでも起こりうるものです。しかし、その多くは食事や運動といった日々の生活習慣を見直すことで、十分に予防・管理が可能です。食べる順番を工夫したり、食後に少し歩いてみたりと、今日から始められることはたくさんあります。
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